令和元年11月25日(月)勉強会

「専門的な療育、療法の意味について」
~ABAやTEACCH、OT、PT、STが
        見る視点について~

1.なぜ療育に行かせようと
  思いましたか?

  ⇢ここでは参加した方に
   意見を聞きました。

   皆さん早い段階での
   利用とそれのメリット
   についての意見が多かっ
   たです。
 

2.皆さんは療育に何を求めて
  いますか?

  ⇢ここでも参加した方に
   意見を聞きました。

   求めている物とそれが
   実現出来そうな環境か、
   療育先で異なるようです。


3.この子達に必要な療育とは
  何か? 

 1)得意を伸ばして生きて
   いく
 
 2)これなら負けない自信

 3)結果ではなく、努力の
   プロセスを褒める

   ⇢ここでは私見も交え、
    プロセスを褒める
    データについての
    話をしました。


4.療育の専門家は子どもたちを
  どう見ているのか?

 1)絶えず客観的に情報収集し、
   仮説立て、評価している

 2)絶えず新しい手法、考え方を
   取り入れている

 3)それぞれの得意分野ごとでの
   アプローチをしている

   ⇢私が参加した、関わった
    専門家を見て、子供たちを
    どう見ているかをお伝え 
    しました。
 

5.代表的な療育・療法の意味
 1)ABA
   →日本名で応用行動分析と
    呼ばれ、別名行動療法とも
    呼ばれる。
        ↓
    伸ばしたい行動は褒め、
    褒美を与えて伸ばし、抑え
    たい行動に対しては、
    褒美を一切与えない、軽い
    不快を与えることによって
    抑えるを基本としている。

  ①アメリカの研究で2~3歳の
   自閉症幼児19人に対して、
   ABAに基づく平均週40時間の
   1対1の療育を、2年以上に
   わたって施した

   →結果子どもたちが小学校に
    入った時点で行われた追跡
    調査で、19人中9人(47%)が
    知的に正常になり、しかも
    付き添いなしで小学校普通
    学級に入学したことがわかった
    (治療前に知的に正常域だった
    のは2人)

  ②行動原理として3つ
   ・強化(好ましい行動を増やす、
    維持するために有効な手続き)
    人は何らかの行動の直後に、
    その人にとって<ごほうび>と
    なるものがあると、
    以後その行動は増加(あるいは
    維持)します。

    この、行動が増えたり、維持
    したりすることを「強化」と
    いい、<ごほうび>となるものを
    「強化子」といいます。

    ABAでは、新しい行動を覚える
    のが苦手という発達障害の特性を
    持つ子どもたちにも、「強化」を
    繰り返すことで行動形成できる
    ように教えていきます。
 
   ・消去(問題行動をやめさせたい
       ときの基本となる手続き)

    →行動の後にごほうびが与えられ
     なくなると、その行動は減少
     します。

     これを「消去」といいます。
     行動が減ったり、なくなる
     法則です。

     「消去」は、発達障害児の
     問題行動に対処するときに
     基本となる、とても重要な
     手続きです。

     問題行動を叱ってやめさせる
     のではなく、その行動の

     「強化子」
     (ごほうび)になっている
      ものは何かを考え、その
      強化子を与えないように
      すれば(=消去)、自然に
      減っていくということです。

      「叱る」より、まず「ごほ
      うびを与えない、得をさせ
      ない」。
 
   ・弱化/罰(嫌なこと(不快)を
    与えることで、行動を減らす
    手続き)

    →「弱化/罰」には、「注意する」
     「叱る」や、「ごほうびを取り
     上げる」などがありますが、あくま
     で“罰”ですので基本的には使用
     しません。

     工夫を重ねてもどうにもならない
     ときの最終手段と考えてください。

     あくまでも、問題行動を減らしたい
     ときには、「消去」(+好ましい
               行動形成)の手続きで対応します。

     行動を減らす・なくすためには、
     まずその強化子を見つけます。

     その際には、問題行動そのもの
     よりも、その前後に起こっている
     ことに注目する必要があります。

     事前の状態と行動、行動の結果を
     書き出すと、その行動がどんな
     結果(強化子)をもたらすのかが
     見えてくるはずです(これをABC
     分析といいます)。

 2)TEACHH
   →1972年以来行われているASD
    (自閉症スペクトラム障害)の
    当事者とその家族を対象とした
    生涯支援プログラム

  ①米ノースカロライナ州で行われて
   いるプログラムには
   「自治体規模の介入」
    →ノースカロライナ州政府の全面的な
     バックアップと全州規模での実施。

   「ゆりかごから墓場まで」
    →幼児期から成人して地域で生活する
     まで、障害児の一生を地域で生活する
     ための長期的体系的プログラム。

   「自閉症児の文化」
    →自閉症の人々の行動様式を文化の
     一つとして捉え理解しようとする。

   「親は共同療育者」
    →専門家のセラピストの支援と同等
     以上に、親の療育への関与が期待
     される。

   「構造化された教育」
    →予測不能な状態が苦手である特性を
     持つ自閉症児に対して、整理され、
     構造化された環境をつくる。

   ◎無理に彼らを世間の常識に合わせる
    のではなく、周囲の人々がASDの
    人々の捉え方を理解し、許容し、
    その上で彼らの特性が社会に適応
    できるようにすることで、QOLを
    高めていこうと考えるのがTEACCHの
    基本的な理念。

  ②TEACCHの「構造化のアイデア」その
   4つの考え方

   →ASD(自閉症スペクトラム障害)
    支援における「構造化」の重要性
    ASDの傾向がある子どもは、自分の
    周囲で「今、何が起きているか」
    「この後、何が起きるか」「自分は
    何をすればいいか」が明確に整理
    されていない場合、状況理解が難しく
    なり混乱してしまいます。
 
    そのため、「構造化」という手法を
    用いて環境を整理することで、状況
    理解を容易にします。

    環境が整理されると、心理的にも
    安定し、活動や学習へ参加することが
    できるようになります。
  
   ・「物理的構造化」活動別に場所を
     決める。「休む場所」「一人で
     勉強する場所」など

   ・「視覚的構造化」話しかけるなどの
    音声コミュニケーションよりも、
    イラストや写真で提示する視覚的な
    コミュニケーションの手法に強みが
    あります。
    →そのため、指示や、意思表示を
     イラストや写真を使って行う
     ようにします

   ・物理的構造化の手法は、大きく
    以下の2つです。

   ・エリアと期待される行動を対応
    させる(勉強する場所、遊ぶ場所、
    落ち着く場所)

   ・エリアを明確な仕切りで分ける
    (ついたて、棚、囲い、カーペット)

    また、活動エリアは大きく4種類に
    分けられます。

     1.ワークエリア(作業、勉強を
      する場所)

     2.プレイエリア(遊ぶ、落ち着く
      ための場所)

     3.トランジションエリア(中継地、
      その日あるいはこの後何をすれば
      いいかなど、個別スケジュールが
      確認できる場所)

     4.その他、カームダウンエリア
      (感情的になったとき、冷静に
      なるための場所)など

   ・ 個別のスケジュール化
    ASDの子どもは、時間の概念を理解
    することが難しく、自分から先の
    ことを見通すこと、先を想像する
    ことに困難があり、いま、ここの
    世界に生きています。
 
    そのため、前もって何が起こるか、
    何をすればいいかがわからないと
    不安やパニックに陥りがちです。

    不安を回避し、安心して学習や
    作業に取り組むために、「スケ
    ジュールを決める」ことが有効です。

   ・ワークシステム
    今の状況を理解したり、先を見通す
    ことに困難があるASDの子どもでも、

    「一人で自立して」
    一連の学習や作業などの活動ができる
    ようにするための方策を、「ワーク
    システム」といいます。

    ワークシステムでは下記のような
    事柄を設定し、わかりやすく伝わる
    ように環境を整えます。

    ①どんな活動(学習や作業)を
     するのか

    ②どのくらいの時間、あるいは量の
     作業や活動をするのか

    ③その課題や活動はいつ終わるのか

    ④終わった後は何をするのか、
     何をしてもよいのか

6.その他の注目したい手法 

 1)モンテッソーリ
  ①モンテッソーリ教育は、医師で
   あり教育家であったマリア・
   モンテッソーリ博士が考案した
   教育法です。

  「子どもには、自分を育てる力が
  備わっている」という「自己教育力」
  の存在がモンテッソーリ教育の前提

  ②モンテッソーリ教育は、教師
   (大人)の価値観で一方的に教え
   込もうとするのではなく、子どもの
   興味や発達段階を正しく理解し、
   子どもが触ってみたい、やって
   みたいと思う環境を適切に用意し、
   その環境と子どもを「提示」などに
   よって結びつけ、子どもの自発的
   活動を促します。

   子どもは、自分で選んだ活動に満足
   いくまで繰り返し取り組みながら 
   様々な能力を獲得していきます。

  ③モンテッソーリ教育では、0歳から
   6歳までの乳幼児期を発達段階の
   特徴から0歳から3歳までの前期と、
   3歳から6歳までの後期に分けて
   考えています

  ④0歳から3歳までの前期は「吸収
   する精神(無意識)」の時期と呼び、
   人生の中でもっとも吸収力が強く、
   その後何年かけても達成できない
   ようなことをいとも簡単に獲得し、
   人間社会に「適応」していく時期
   です。

   子どもの自己教育力を発揮させる
   環境として主に7つの教育環境が
   用意されています。

   ・粗大運動の活動
   ・微細運動の活動
   ・日常生活の練習
   ・言語教育
   ・感覚教育
   ・音楽
   ・美術
   ・粗大運動の活動

  ⑤3歳から6歳まで
   3歳から6歳までの後期は、「意識の
   芽生え」の時期と呼び、前期に
   無意識に吸収したさまざまな事柄を、
   意識的に整理、秩序化していく時期
   です。

   子どもの自己教育力を発揮させる
   環境として主に5つの教育分野が
   用意されています。

   ・日常生活の練習
   ・感覚教育
   ・言語教育
   ・算数教育
   ・文化教育
   ・日常生活の練習

 2)STEAM
  →STEAMとは、Science(科学)、
   Technology(技術)、Engineering
   (ものづくり)、Art(芸術)、
    Mathematics(数学)の5つの
    単語の頭文字を組み合わせた造語

  ①これら5つの領域を重視する教育
   方針を意味します。

   この教育方針の目的は、現実の
   問題を解決に導く力や今までに
   ないものを創造する力を育むこと
   です

   元々はアメリカが、科学技術
   分野での競争力を高めるために
   推進してきた教育方針です

  ②STEAM教育が注目される背景、理由
   
   STEAM教育が注目されている
   背景には、テクノロジーの進展が
   あります。

   具体的には、AIやIoTなどの科学
   技術の発達やスマホ・タブレットと
   いった端末の進化などが挙げられ
   ます。
 
   それによって社会は急速に変化し、
   社会に必要とされる人材も変化して
   います

  ③これからの社会では、科学技術を
   活用するだけでなく、作れる人材が
   必要です。

   科学技術の理解を深めると同時に、
   それらを利用して新しいものを生み
   出す力を養うための教育として、
   STEAM教育は注目されています

  ④文部科学省のSTEAM教育に
   対する方針

   文部科学省は、これからの日本の
   学校現場における教育方針に
   ついての報告書「Society5.0に
   向けた人材育成~社会が変わる、
   学びが変わる~」を2018年6月に
   公開しています

  ⑤文章や情報を正確に読み解き、
   対話する力、科学的に思考、
   吟味し活用する力、価値を見つけ
   出す感性と力、好奇心・探求力
   これらの力を身に着けるための
   思考の基盤をつくるためにSTEAM
   教育を導入すべきとし、文系・
   理系を問わずすべての生徒に学ば
   せる必要があるとしています

  ⑥文部科学省は高等学校時代から
   STEAM教育を導入していく方針で、
   高等学校を学生が社会の変化に
   対応できる能力を身につける場に
   しようと考えています。

   その思考の基盤となるSTEAM
   教育をすべての生徒に学ばせる
   必要があるとしています

  ⑦学習事例
   ・プログラミング学習
    子供向けのプログラミング教室。
    簡単なゲーム等を作ることが
    できるようになる。

    オンライン上のプログラ
    ミング学習
   
   ・ものづくりやワークショップ
    『勉強』という形ではなく、
    ものづくりを通して理数系の
    世界に親しめる

    ロボットを作ることで、高度な
    理数系の知識を得ることができる。

    簡単に組み立てられるブロックを
    使い、ロボットのプログラ
    ミングを学ぶ

    大人にとっては『勉強』『学び』と
    なってしまうことも、子供にとっては
    楽しく遊ぶ中で技術や知識を得る
    機会になる
  
  ⑧社会で求められる感性を身につけ
   られるAI時代に必要な感性は、以前
   とは大きく異なり、

   ・複雑な問題解決力
   ・他者との調整力
   ・人とのマネジメント力
   ・クリティカルな思想
   ・交渉力
   ・傾聴力

   などが必要とされています。

   STEAM教育はこのような感性を
   身につけることができる教育手法
   なので、教科書の内容だけではない
   部分も注目されている。
  
7.まとめ
 1)専門家の領域は専門家に任せる
   →保護者と専門家では役割が違う

 2)行われていることの意味、何に
   つながるかは理解しておく必要が
   ある

   →家で療育と同じことをする
    必要があるか?

 3)どの手法や療育を選ぶにしても、
   将来どう暮らしているのか、
   イメージしながらその時、その時
   選択していく

 4)苦手を克服するではなく、得意を
   見つけ、自信を持ち、何度でも
   チャレンジする力をつけることが
   大事

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