令和元年10月25日(金)勉強会
「わが子の将来に必要になるかも障害年金について」
〜まだ早いと思わず今から出来ること、知っておくこと~
1. 障害年金とは?
1)障害によって生活の安定が損なわれないように、日常生活を送る上で困難が
ある人に支払われる公的年金の総称。
2)国民年金法、厚生年金保険法等に基づき日本年金機構が運営業務を行って
いる。
2. 障害年金の種類
1) 障害基礎年金
①障害が原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の
診療を受けた日(初診日)に、すでに国民年金に加入していた人が受給する
ことが出来る障害年金。
②国民年金に加入前、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも
支給されます。
→仕組みとしては、20歳になった段階で国民年金に加入したという状態を
作って、障害年金申請となるようです。
2) 障害厚生年金
①初診日にすでに厚生年金に加入していた人に支給され、障害基礎年金に
上乗せするものとして給付される報酬比例の年金。
②皆さんのお子さんが20歳になって申請する場合は、殆どの場合が障害基礎
年金を申請することになります。
3. 年金の受給要件
1)初診日が特定できること(初診日要件)
①障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日のこと。
→病気やけがにおいての初診日で、その病院での初診日ではないの
で注意。
②知的障害に関しては先天的な障害とされているので、初診日の証明は
必要ない。
③アスペルガー症候群や自閉症スぺクラム等にもこの例外は拡がりつつ
あるが、まだ発達障害全般には保障されていない。
2)年金制度に加入している機関に初診日があること
(制度加入要件)
①初診日に国民年金や厚生年金保険など、年金制度に加入している
必要がある。
②初診日に住所が日本国内にあったならば、初診日に20歳未満、あるいは
60歳以上65歳未満でも国民年金に加入していたのと同じ扱いになる。
③20歳未満は国民年金に加入できないことから、20歳に達した時に障害
等級に該当していれば加入要件は必要ない。
④20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人も年金制度の対象。
3)定められた機関に保険料が納付されている事(保険料納付要件)
4)一定の障害の状態である事
①障害等級に該当している必要があり、障害等級とは、障害の状態を分けた
もので、重いものから1級、2級、3級とされている。
②国民年金法施行令では1~2級(障害基礎年金)
③厚生年金保険方施行令では1~3級及び3級より軽度の障害状態
(障害厚生年金)
④障害厚生年金には障害手当金があるが、障害基礎年金には障害手当金
はない。
※障害手当金:初診日に厚生年金に加入している場合で、初診日からその
障害が治った(症状固定)と判断された日の5年以内に請求。
つまり障害厚生年金3級には該当しないが障害がある場合、一時金として、
障害厚生年金3級相当の2年分が支給。
4.障害認定基準
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 平成28年6月1日改正」を参考に
認定基準のポイント
1)発達障害の場合
①発達障害とは?
発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達
障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能
の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの。
②障害の認定方法
発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニ
ケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことが
できないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を
行う。
発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、
併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定。
③初診日の取り扱い
発達障害は通常低年齢で発症する疾患ですが、知的障害を伴わない
者が発達障害の症状により、始めて受診した日が20歳以降で会った場
合は、当該受診日を初診日とすることとされている。
④各等級に相当すると認められるものの一部例示
障害の程度 障害の状態
1級 発達障害があり、社会性やコミュニケー
ション能力が欠如しており、かつ、著しく
不適応な行動がみられるため、日常生活
への適応が困難で常時援助を必要とする
もの
2級 発達障害があり、社会性やコミュニケー
ション能力が乏しく、かつ、不適応な行動が
みられるため、日常生活への適応にあたっ
て援助が必要なもの
3級 発達障害があり、社会性やコミュニケー
ション能力が不十分で、かつ、社会行動に
問題がみられるため、労働に著しい制限を
受けるもの
⑤日常生活能力等の判定
日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能
を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるもの
とされています。
⑥就労している場合の取り扱い
勤労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契
約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働
に従事しています。
労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したも
のと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を
考慮するとともに、仕事の種類、内容、従事している期間、就労状況、
仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意志疎通の状況等
を十分確認したうえで日常生活能力を判断されます。
⑦等級判定のガイドラインについて
(発達障害に係るガイドライン)
障害基礎年金の認定に地域によって格差が生じていたことから、障害
等級判定ガイドラインが作成され、平成28年9月1日以降の等級判定の
審査に適用されています。
※この障害の目安は、障害の程度の認定における参考とされますが、目安
だけでは捉えきれない障害ごとの特性に応じて考慮すべき内容を診断書
等から審査して、最終的な等級判定が行われることととされています。
2)知的障害の場合
①知的障害とは?
知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)に
あらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの
特別な援助を必要とする状態にあるものをいいます。
障害の程度 障害の状態
1級 知的障害があり、食事や身のまわりの
ことを行うのに全面的な援助が必要で
あって、かつ、会話による意思の疎通が
不可能か著しく困難であるため、日常
生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級 知的障害があり、食事や身のまわりの
ことなどの基本的な行為を行うのに援助が
必要であって、かつ、会話による意思の
疎通が簡単なもものに限られるため、日常
生活にあたって援助が必要なもの
3級 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの
②知的障害の認定
知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、
日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合
的に判断する必要があるとされています。
また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存している
ときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断
して認定されます。
③知的障害の程度と知能指数の目安
IQ 精神年齢
最重度 20以下 3歳未満
問いかけの言葉が理解できない程度。動くことに制限。失禁。常に
援助が必要。
重度 21~35 3歳未満
基本的な欲求を伝えられる言語機能あり。持続的な介護が必要。
中程度 36~50 5歳~8歳
身のまわりのこと、運動能力が遅れる。基本的な技能を得るため
訓練が必要。
軽度 51~70 7歳~10歳
食事、洗面、着衣など身のまわりのことはできる。中学レベルの
勉強に支障がある。自立は可能。
④日常生活能力等の判定
日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的
機能を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断するよう
努めるとされています。
※知的障害にしろ、発達障害にしろ、手帳の等級判定とは異なる判定
基準で行われています。
5. 請求手続きの流れ
1) 障害基礎年金の場合
①区役所の国民年金係に相談
②申立書、診断書等が渡されますので、診断書はかかりつけの
医師に年金申請用として渡します。(診断書作成費用がかかります)
※ここでポイント
診断書を書いて貰う際には、先に病歴・就労状況申立書を
記入し、それを渡して見て貰いながら診断書を書いて貰う。
→診断書と病歴・就労状況申立書と内容が合っていない
場合、審査で弾かれることがあります。
③全ての書類が整ったら、国民年金係に申請。
(必要書類)
・年金手帳、基礎年金番号通知書
・診断書
・病歴・就労状況申立書
・受診状況等証明書(診断書作成病院と初診の病院が異なる
場合に必要)
・印鑑
・住民票
・預金通帳(本人名義)
・障害者手帳(取得している場合)
・所得状況届(20歳前に初診のある方)
・戸籍謄本
・その他
④ 区から日本年金機構に裁定請求書の送付(申請書等)がされ、審査に
入ります。→約2~3か月かかります。
⑤日本年金機構より、年金支給または不支給の決定通知が来ます。
⑥申請した日にさかのぼり、年6回(2月、4月、6月、8月、10月、12月)で
年金支給されます。
6. 受給金額
障害基礎年金の場合(その年度の経済状況で変動がある)
1)1級障害の場合
①全部支給:975,125円(年間)→月額:81,260円
②一部支給:487,563円(年間)
2)2級障害の場合
①全部支給:780,100円(年間)→月額:65,008円
②一部支給:390,050円(年間)
7. 働いていたら障害年金はもらえない?
1)働いて、給与をもらっていたらもらえないわけではなく、所得制限がある。
平成30年度 所得制限
・本人所得が3,604,000円以下は全部支給
・3,604,000円を超え、4,621,000円以下は一部支給
8. 障害者手帳の等級と支給は基準が違うの?
1) 障害者手帳と障害者年金は管轄も異なり、支給の基準も異なります。
2) 障害者手帳は持っていないが、障害者年金は受給している方もいます。
(精神障害の方に多いようです)
9. 地域によって審査の基準が異なる?
1)国や都道府県ではそういったことはないと見解を出していますが、実例と
して埼玉県では働いていたら障害年金は出ませんと相談先であるリハビリ
センターの職員が公言していたり、都内の精神科医も埼玉県では働いて
いたら出ないので、診断書は出しても無駄と断られたりしています。
2)障害年金は国の制度ですが、審査は都道府県単位で行うため、実際に
埼玉県で就労していて、障害年金を申請しましたが却下でした。
パート社員で最低賃金以下であったにも関わらずです。
3)こういった問題は各地でみられているようです。東京都では就労して
いても、要件に合えば障害年金は支給されています。
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